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3-11.帝王後任
2008 / 02 / 24 ( Sun )
CN3-11

浦東空港で飛行機を降り、タクシーで市内に向かう。

「Yの後任って知ってる人?」

とMが尋ねる
上海支社の悪友Yは、前の出張の後で香港に転勤になってしまったのだ。後任になったのは台湾出身のL。Yより相当年上の人だ。

「知りませんねぇ。前こっち来てた時はまだ台湾にいたんじゃないですかね」

事前に手に入れていた略歴を思い出しながらMに言う。
ほどなく支社に着き、新しい担当者と顔合わせ。大柄な身体をブランド物の高そうなスーツで包んだその顔は、以外なほどの童顔だ。脂っ毛の薄い白髪交じりの髪は七三きっちり分けられている。眼鏡の奥の優しげな目が微笑んで俺たちを見つめている。上海の種馬だったYと比較してまた全然違う方向性でまとめてきたもんだ。

仕事に入ると切れ味鋭いプレゼンが始まった。このおじさん、MBAも持ってんだそうだ。
駄目だこりゃ、毛並みが違うよ。

負けず嫌いのMが果敢にも論戦をしかけるのを俺はまるでドンキホーテでも見るような気持ちで見つめていた。けちょんけちょんにやられるかと思っていたら、強引に泥仕合に持ち込んで議論を大混乱に陥れることに成功した。
ちょっと見直したぜMさん。すげぇよあんた。でも何も結論出なかったけど。

2時間あまりの大論戦。結論は出なかったが、いい汗かいたぜ、みたいな満足感で雰囲気が緩くなる。最後は「良い議論だったよな」なんて感じでエールを交換しつつ挨拶してやがる。
あれ、こんなシーンどこかで見たことあるよ。そうだ、昔のスポ根アニメだ。夕日になるまで殴り合ったあとで意気投合するってやつ。あれかぁ。

それからメンバー全員で会食。結構高そうなレストランで夕食。いきなり最初から乾杯だ。
「Cheers!」杯を上げて乾杯すると、一口のんで、グラスでテーブルをコンコンと叩く。何やらこれが作法らしい。俺たちも真似をする。

食事が進むにつれ、この「Cheers!」が何度も出てくる。話の区切りがついたり、ちょっと沈黙になるとすかさず誰かが「Cheers!」といって、皆でグラスをあげ、そしてコンコン!。台湾ってこういうノリなのか?

適応力だけは人一倍あるMと俺とは、最後の方では自分から「Cheers!」と言って乾杯を先導したりして大いに馴染んで食事を終えた。

後日、そのLからメールが来た。

「先日の議論は有意義だった。今後もよろしく。Cheers」

おいおい、結語までCheersかよ。


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02 : 56 : 48 | 筆談小姐3 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
3-12.上司懐柔
2008 / 02 / 24 ( Sun )
CN3-12

食事を終えてLたちと別れてホテルに戻る。時刻はまだ早くて午後9時だ。
フロントでチェックインしながらMが俺に問いかける。

「明日の飛行機って何時だっけ?」
「あ、実はですね。俺は週末こっちに残りますんで」
「なにーっ!?」

Mが思わず出した大声にフロントがビクッと身をすくめた。

「何でだよ」
「いや、ちょっとこっちに友達がいるもんで」
「お前、前の出張ではそんな話全然してなかったじゃないかよ」
「いやまぁ、何というか」
「女かよちくしょう」
「とにかく、今日はしっかりお供しますから。日式で全然構いませんから」
「ちぇっ、お前の指図は受けねぇよ」

一発で事情を当てるところがMらしい。
でも今回ばかりは俺の勝利は揺るがない。何しろこっちには待ってる小姐がいるのだ。

「俺も上海は実は嫌なんだよなぁ。北京には待ってる小姐がいるのに」

負けず嫌いのMが自分の秘密を打ち明ける。ここは聞くのが部下の仕事だ。

「え、いつの間に?俺の知ってる小姐ですか?」

ちょっとリアクションわざとらしかったかな。でもMは気にせず話を続ける。
攻め派の人間はガードが甘いというのは本当らしい。

「北京の最後の日に日式KTVに行ったろ。そこの小姐だよ」
「あ、あのインリンに似た娘ですよね」
「そう、あの後日本に電話をかけてきてさ」
「え?国際電話かけられる電話もってるんですか、そりゃ凄いかも」

これは俺の本音だ。中国小姐は国際電話かけられないと思ってた。

「だいたいKTV小姐じゃないんだよあの娘は、あそこの従業員なんだって。大学で舞踏を習いながらバイトしてたんだってさ」
「へぇ、ちゃんとした娘なんですねぇ。でも無茶苦茶エロかったですよね」
「まぁなぁ。で、この前電話してきてさ、逢いたいとか言うんだよ」
「逢いに行ったらいいじゃないですか。何だったら今度北京に出張作りましょうよ」

単純に自分が自由行動する気まずさを紛らわしているだけのつもりが、だんだんと上司の幸せを願う良い人になってきてしまった。

しまったって、、、
それはそれで良い事なんだけどね。



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02 : 59 : 00 | 筆談小姐3 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
3-13.再会小姐
2008 / 02 / 24 ( Sun )
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明けて土曜日。俺が目覚めた頃にはMは既に帰国便に乗っていた。
一人残った俺。前回は上海支社のYが誘って残ったわけだけれども、今回は違って、知り合いといえば例の彼女だけ。支社の連中は俺が帰ったと思ってるわけで、逆に街で出くわしたりすると厄介なことになる。

ホテルは新錦江大酒店を予約した。Jin Jiang Towerといって、丸いタワー型になっている。手抜き工事で傾いているという噂だが、値段は別に安くはない。強気である。

ホテルを移動して部屋に入ると早速荷物をほどき、中国用の携帯電話を取り出す。彼女にSMSを打つと10分後に返事があった。「とうとう来たのね!」

夜の仕事は週2日休みがとれるので土日休んでもらったが、昼の学校は休むわけにいかないらしい。というわけで、逢うは夕方からと相成った。6時頃に授業が終わるというので、学校の前で待ってるよとSMSを打つ。
むふふ、いい感じじゃないのさ。

夕方まで時間があるので外をぶらつくことにする。Tシャツとジーパンに着替えて上はラフな格好なんだが、靴が革靴。スーツに合わせられる範囲でできるだけカジュアルなやつを選んだんだけど、それでもちょっと変な感じだ。まぁこういうところは限界があるよな。パソコンやら資料やらも荷物に入れるので靴をもう一足入れるスペースが見つからないのだ。

ぶらぶらとホテルを出て街を歩く。初夏の上海は既に真夏ような蒸し暑さだ。日本と違い、何というか、独特の匂いが鼻をつく。中華料理の匂いかゴミの匂いか、それとも沢山棲んでる中国人の汗の匂いなのか、何というか、非常に有機物的な臭い。正直、あまりいい臭いではない。でもまぁ、ここに来るからには慣れるしかない。俺はその空気を胸いっぱい吸い込んで、また歩き始めた。

夕方5時までにホテルに戻り、シャワーを浴びて服を着替える。汗臭い服で逢うわけにはいかないからね。俺なりの配慮だ。ジーンズのポケットに携帯電話とお金、それから筆談用のメモとペンをそれぞれ入れて、さぁ出発だ。
ホテルの前からタクシーを拾って、彼女の学校の近くまで行く。そこからぶらぶらと歩いて学校の前まで着いた。

ガードレールに腰をかけて足をぶらぶらさせながら待つ。ほどなく授業が終わったらしく、生徒らしき男女が続々と出てきた。

その人の流れがひとしきり終わった後、彼女が姿を現した。
3ヶ月振りの再会だった。


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03 : 00 : 09 | 筆談小姐3 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
3-14.進展期待
2008 / 02 / 24 ( Sun )
CN3-14

一人で学校から出てきた彼女は俺の事をみつけると小走りにかけよってきた。

「ひさしぶりね」

と言ってまっすぐ俺の目を見つめる。仕草は前に会った時と同じだが、明らかにテンションが高い。電話とメールの効果は確かにあったようだ。このままいきなり抱きしめても嫌とは言わないんじゃないかと、本気で思った。

二人で話しながら歩き出す。交差点のところで彼女がはたと俺の方を振り向いて

「Where are we going?」
「I don’t know.」

まずは夕食だよな、という話になり、交差点の脇で相談をはじめる。
「何が食べたい?」と聞くので「何でもいいよ」と答えると、「何よそれ?」と彼女が笑いながら言う。「じゃぁ、洋食でもいい?」「いいよ。」
店を見つけるのは彼女の役目だ。じゃぁねぇ、と顎に指をあてながら思いを巡らしている。
横を見たその目元が美しい。中国の流行語で美人のことを「美眉měi méi(略してMM)」と言うんだけど、なるほど確かに女性の美しさは眉元に現われるのかもしれない。

「OK. We shall take a taxi」

俺たちはタクシーを拾い、店まで移動した。茂名南路の淮海中路と永嘉路の間は外人向けのバーが並ぶ通りがあるのだが、その一角にある店に入った。階段を上り、がらんとした店内を見回す。彼女が店員に何事か話しかけ、どこにでも座りなよ、という感じで店員が手を振るのを見ながら、窓際の席に陣取った。

「ここはハンバーガーがおいしいの」

ハンバーガーといってもマクドナルドみたいなもんじゃなくて、料理して出てくるもらしい。やや脂でぬるぬるする机を気味悪く思いながらも、まぁこれが中国だと思って納得する。隣からトランスっぽい音楽が響いてくる中でしばらく待っていると料理が運ばれてきた。
あれ、意外に美味しいじゃないの。中国人は何を作らせても上手だよな。

食事を終えて店を出たところで、「Where shall we go?」と彼女がまた尋ねる。
俺たちにとっての決まり文句だ。

どこかバーに行こうよ、と言うと、いいわ、この近くに行ってみたかった店があるの、と彼女。
茂名南路の1本東の瑞金二路まで回り、瑞金賓館の敷地に入る。ここはイギリス商人の元邸宅で、今はホテルやらバーやらが入っている。結構ムード満点ですよこれは。

心の中で密かに雄叫びを上げながら、俺は黙って彼女につき従った。



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03 : 01 : 45 | 筆談小姐3 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
3-15.一歩前進
2008 / 02 / 24 ( Sun )
CN3-15

彼女と食事を終え、近くのバーに。
瑞金賓館の中にあるバーに入る俺たち。彼女が先に立って席を選んでいる。店内と店外のオープンカフェがあるが、彼女は外の方がお好みの様だ。しかし、オープンカフェとは言っても庭園の中の池の脇に作ったウッドデッキなので、人通りは少ない、しかも客が少なく俺たちの他には6-7人のグループひとつしかいない。照明も暗く、テーブルのキャンドルだけが頼りだ。

その中の一番奥まったところに俺たちは陣取った。
改めて言うが、このロケーションは俺が選んだんじゃなくて彼女が選んだのだ。もう俺にしてみればドキドキもんだ。ヤル気だよこの小姐は、と心の中で歓声を上げっぱなしだ。

二人で並んでソファー調の椅子に腰を下ろす。正面に少し離れて俺たち以外の唯一の客であるグループが座っている。店員がテーブルのキャンドルに火をつけたので少し辺りは明るくなったが、依然としてそこは薄暗く、少し離れると表情すらも良く見えない。

店員に酒を注文し、モノが来るのを待つ。と、その時、前のグループが会計を済ませて席を立った。アルコールを持ってきた店員が去ると、薄暗いウッドデッキには俺たち二人だけだ。周りを薄暗い闇が包む。このウッドデッキに来るには通路を歩いてこなくてはならないが、その先にも人影はない。

俺が状況分析している間に彼女が先に動いた。

「本当にあえて嬉しいわ」

左側に座った彼女がの手が俺の左手に触れる。その手をほどき、右手で彼女の手を握りなおす。開いた左手を彼女の肩に回すと、彼女は身体の力を抜き、俺の胸にもたれかかってきた。

いやぁ、何というんですか、この体勢。がっぷり四つじゃなくって。。

何と呼ぶのかはともかく、これはまごうことなき恋人モード。これをどんなに待ち望んだことか。

まったりモードで話をしているとメールの話になった。

「I like your words」(私、あなたの文章好きよ)

好きだと言い続け、彼女の元気付け続けたメールは評価されていたわけだ。

「ありがとう、でも、あれ書くの凄い時間かかるんだよね」

と俺は内情を話す。

「俺が手紙書くのにどんだけ時間かけてると思う?」
「10分くらい?」
「俺、英語苦手なんだよ」
「じゃぁ、30分くらい?」
「2時間以上」
「What?」

彼女は驚いて声を上げた。
どんくさい話だけど、彼女には誠実さとして伝わったようだ。
いいぞ、ポイント追加だ。



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03 : 03 : 05 | 筆談小姐3 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
3-16.自宅拝見
2008 / 02 / 24 ( Sun )
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その日はバーでまったりと話を続け、その後は普通にタクシーに乗り、彼女のマンションまで送ってゆく。今回はかなり進展があったんだけど、まったりしただけなので流石にこの流れで家に上がりこむというのは考えにくい。

前回の反省もあって冷静な俺は、息子を寝かしつけたまま紳士的に彼女を送ると、タクシーを一旦降りて再び彼女を抱きしめた。彼女も俺の首にキスをして、

「じゃぁね、また明日」

そう、明日があるのだ。

タクシーの運転手は女性運転手だ。上海のタクシー運転手には、女性が思ったより多い。北京で小姐がらみでタクシーに乗った時には男の運転手に随分いじられたものだが、女性の運転手はその辺、非常に冷静で、決してからかってはこない。

車が新錦江大酒店に近づくと、運転手が何事か話しかける。どこに止めたら良いんだと言っているのかな。ちょうど次の信号で左折すれば入り口に入れるので、「大拐」(左折して)と言うと、本当に文字通り、言ったその場で左折を始めた。

曲がった先は閉まったホテルの門だ。歩道に途中まで乗り上げた形で車が止まる。運転手が何事か文句をつけている。

ていうかさ、左折って行ったら普通交差点で曲がるんじゃないの?言ったその瞬間動くのかよ。反応速過ぎだよ。どうするのかという調子で運転手がまた何事か喋る。バックしてやり直させるのも面倒になって、

「没問題、謝謝。給我発票」(いいよ、ありがとう、レシート頂戴)

と言って車を降りる。振り返ると、歩道に乗り上げて止まった車は思いのほかワイルドな感じだ。何か事件があったみたいだよ。

***

翌日の日曜日。昨日と同様、彼女は昼間は学校なので会うことはできない。昼前までごろごろしていた俺は、暇つぶしに彼女のマンションまで散歩してみようと思った。

最初に上海に来たときもそうだったが、上海の中心街は狭いので歩くには丁度いい。2,3時間歩く覚悟を決めさえすれば、ほとんどの場所まで歩いていける。初夏の暑い日差しの中、木陰を探しながらぶらぶら歩いてゆく。繁華街からちょっと出ると、いい雰囲気の洋館に混じって古い住居が軒を連ねる。玄関先で水浴びをしている人がいる。

1時間ほど歩いて彼女のマンションに着く。立派なマンションだ。上海最高級クラブに勤め、さらに同僚3人と部屋をシェアして借りているというから、結構な家賃を払っているんだろう。北京で仲良くなった小姐の、刑務所のような住居とはえらい違いだった。


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03 : 04 : 22 | 筆談小姐3 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
3-17.日式交流
2008 / 02 / 24 ( Sun )
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コンビニで飲み物を調達し、うだるような暑さの中を木陰を探しながらぶらぶら歩いてホテルに戻るともう夕方だ。

待合わせは昨日と同様、彼女の学校の前。昨日と全く同じ様に待ち、彼女も同じ様に出てくる。そして「Where shall we go?」と同じ会話。

「今日は中華が食べたいよ」と彼女に言う。
「中華って言ってもいろいろあるわよ」と彼女が切り返す。
「広東料理が良いな」というと、暫く考えてからうんと頷き。
「We should take a taxi」。また昨日のデジャヴに戻ってくる。

タクシーで香港広場の傍まで行き、階段を2階に上って店に入る。昨日と違って、そこは物凄く賑わっていた。欧米人の姿はほとんど見えない。地元の人が行く有名店なのかもしれない。テーブルについて彼女が注文するのを黙って眺める。店員を捕まえて長々と話をしている。どこまでが料理の説明で、どこからが注文なのかは分からないが、今日も沢山の皿が並ぶことは間違いないだろう。

「あなたは何にする?」と訊くので、
「いや、俺はいいよ」と答える「君のおこぼれをもらえれば十分だ」
彼女が大笑いして、「じゃぁ、飲み物は?」と俺の眼を覗き込む。

何だか今日もいい感じだなぁ。今日はゴールを決められるかもしれないな。調子に乗ってハットトリックなんかしちゃったりして。と不埒な想像がアタマをよぎる。

まぁそれはそれとして、まずは食事だ。青島ビールを自分で頼むと、彼女が「ピンガ」(冷たいやつね)と付け足した。ウエイトレスが去って、ほどなくテーブルが皿で埋め尽くされた。談笑しながら料理を貪り食っていると、後ろから不意に日本語が響いてきた。思わず耳をそばだてる。

「でさぁ、○○さんと一緒に△△してあげたわけ」

流暢な日本語だ、話の内容からするに中高年のビジネスマンらしい。

「そう、それは○○さん喜んだね」

典型的なクラブ風日本語。お相手は中国小姐のようだ。

ま、これも愉しみ方だよな。彼はホームゲームで圧倒的優位を愉しんでるわけだよ。それに比べりゃ俺のゲームは間違いなくアウェイゲームだよなぁ。休みなく食物を口に運ぶ目の前の小姐を見ながら俺は思った。

そんな俺に眼をとめて、彼女はまた新たな食物を俺に勧めるのだった。



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03 : 05 : 31 | 筆談小姐3 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
3-18.浦東川辺
2008 / 02 / 24 ( Sun )
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食事を終えて通りに出ると、彼女が「Where shall we go?」と節を付けて歌うように尋ねる。
バーは昨日行ったしなぁ、どこか景色の綺麗なところでも行こうよ、外灘とか。

何気なく口にしたその一言に彼女が大きく反応した。急に顔を輝かせて
「外灘ね。良いわ」
妙に乗り気だ。何がヒットしたんだろう?

タクシーの行き先は彼女が指示する。しばらく走るとトンネルに入った。あれ?河の反対側に行くんだ。外灘といえば、西側の川岸だと思っていた俺はちょっと驚いた。反対側には一体何があるんだろう。

トンネルを出たタクシーは交差点を曲がり、上海タワー脇を通り抜けてシャングリラホテルの傍で停車した。降りるとすぐ目の前に公園の入り口の様な門がある。彼女が俺の手を握ってくるので握り返す。手をつないで公園の中の階段を上り、河に向かって歩く。河岸は埠頭の様になっていて、バーやらアイスクリームショップが点在している。しばらく歩くと河岸にベンチが並ぶ広場に出た。横浜の山下公園みたいな感じだ。

なるほどこういうスポットがあったのか。対岸は観光で有名なスポット、河に沿って並んだ洋館が見事にライトアップされている。それを望むこっち側はアベック向けの絶好のロケーションだ。

二人で開いたベンチを探す。ちょうど席を立つ二人がいるのを見て開いたベンチに駆け寄る。同じくベンチを探していたカップルと鉢合わせ。椅子取りゲームの様に彼女が座ると、もう一方のアベックの男も椅子に座る。ベンチで違うカップルが誕生したみたいになった。俺ともう一人の小姐は脇で立ったまま大ウケだ。

笑いながらも彼女は席を譲ろうとはしない。どうすんだよこれ、と思いながら顔を上げると、二つ先のベンチに座っていた人たちがまさに席を立つところだった。彼女を置いて小走りに走り、空いたベンチを確保する。それから振り返って手招きをして彼女を呼ぶ。彼女は席を取り合っていたカップルに何事か話して声を出して笑い合うと、こちらにかけて来た。俺の眼を真っ直ぐに見て

「You’re much smart than me」(私よりずっとアタマ良いわね)

だって俺、日本人だもの。冗談めかしてそう言い、二人でベンチに腰を下ろした。
迷わず彼女の肩に手を回すと、彼女は頭を俺の胸にもたせかけてきた。

うひょー。

思わずアタマの中で歓声が上がる。昨日の今日だから当たり前だけど、以前と較べたら大きな進歩だ。まだ慣れないよ。


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03 : 06 : 58 | 筆談小姐3 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
3-19.我接吻了
2008 / 02 / 24 ( Sun )
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日本で女の娘と食事をして、山下公園に行って、ベンチに座って、肩なんか抱いてしまった日には、相当期待感は高まるだろう。国は違えどまさに状況は同じ。俺の期待感はもうレッドゾーンだ。
30分後には糸を引く様なディープキスで、その後はホテルに直行してやる。

決意を新たに彼女の肩を抱きしめる。他愛もない会話をしながら、だんだん核心に入ってゆく。

「私、あなたの誠実さに感動したわ。あのメールに毎回2時間もかけていたなんて」

昨日の話が相当インパクトあったようだ。

「いやぁ、単に英語が苦手だっただけなんだけどね」
「普通そんなことできないわ」
「でも、君はそうでもないよね。昨日の分のチップも請求するつもりでしょ」

と、石を一つ投げてみる。彼女は驚いた様に身体を起こし、こちらに向き直った。

「そんなことないわ。私はあなたに逢いたいから逢ってるの。お金なんかいらないわ」

汗で濡れた顔に髪の一部がくっついている。無防備になってその表情は、俺の知らなかった顔だ。なるほど南方系っぽ顔立ちをしている、と思った。
でも、顔はともかく、聞きたかったのはその一言だ。

「ね、キスしようよ」

ここが機会だと思った俺は攻めの一手を繰り出す。しかし城壁は意外に高かった。

「駄目よ。ここはpublic space じゃないの。そんなこと恥ずかしくてできないわ」
「だって、見ろよ隣の中国人だってやってるぜ」

隣のベンチはキスなんてもんじゃない。間違いなく舌が入ってる。中国人のアベックというのは、ある面日本以上に臆面なくいろんなことを公衆の面前でやっているのだ。タブーを破るのが近代の証、愛情表現の発露だと思っているのかもしれない。それを横目で見た彼女は冷静にもこうのたまった。

「言ったでしょ。私は Traditional way の人間なの。駄目よそんなこと」

やや意気消沈する俺、ちょっと会話も途切れる。

と、彼女が「あーあ眠くなってきた」と言って俺によりかかりながらベンチの背にもたれ、顔を上に向けて眼をつむった。そのまま無言でしばらく時間が過ぎる。

あれ?誘ってる?

ちょっと躊躇したが、まぁここは行くしかないでしょう。いただきまーっす。
彼女の顔に覆いかぶさるように顔を重ね、唇を重ねる。

顔を離すと、彼女はパッと眼を開け、そのまま首を左右に回して辺りを見回す。誰も見ていないのを確認すると、こっちをきっと見つめて「やったわね」とばかりにふくれてみせた。


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03 : 08 : 13 | 筆談小姐3 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
3-20.ツンデレ
2008 / 02 / 24 ( Sun )
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外灘の東岸に並んだベンチの上、彼女の唇を奪うことに成功した俺。ここは一気呵成に攻める時だ。時刻はもう夜の11時過ぎ。気は熟している。

「そろそろ移動しない?俺の部屋までおいでよ」と誘うが、「それは嫌」と拒否する彼女。「今夜は朝までここにいるの」と言い出す始末だ。そんな無茶な。

夜の上海は蚊が多い。俺はジーンズだから気にならないが、彼女の露出した足は蚊の格好の標的のようだ。無茶苦茶刺されている。時々苛立たしげに声をあげ、足を揺する様枯らしても、相当つらいんじゃないかと想像できる。「蚊に刺されてかゆいでしょ、もう部屋に戻った方が良いよ」と誘うも「いーや!」と拒否の姿勢を続ける彼女。

いつしか河岸の店も営業を終わり、どんどん周囲が暗くなる。あれほど沢山いたアベックも一組また一組と去って行き、代わりにホームレスがベンチを陣取り始めた。夜中の2時になってようやく彼女は眠気に負け、「今日はもう帰る」といい始めた。いずれにしても、今回は駄目そうだ。

仕方なく二人で手をつないでベンチ立ち、もと来た道を戻ってゆく。公園の出口にはタクシーが沢山待機しており、俺たちはその中の一台を選んで乗り込んだ。

彼女を先にしてタクシーに乗り込む。彼女が席の中央から奥に入っていかないので必然的にべったりくっついた形になる。タクシーの運転手はなにやら指示をして、彼女は再び俺に身体をもたせて眼をつむった。

しばらく走ってから、彼女は不意に眼を開けて辺りを見回した。そして急に運転手に向かった怒鳴り始めた。どうやら遠回りしようとしていたらしい。それを見つけるや否や彼女は運転手を強烈に攻撃しはじめたのだ。一通りやり込めた後、暫く間をおいて、まだ怒りがさめやらぬらしくさらに小言を重ねる。彼女の張りのある大声が車内にこだまする。運転手はすっかり怯えきって、彼女の言葉に頷くだけだ。

ひとしきり運転手を締め上げると、彼女は満足げに再び俺の胸にアタマをもたせかけてきた。

今風に言うとツンデレって言うんですかこれは。しかし、ツンの部分が異様に強烈なんですけど。虎に馴付かれたムツゴロウ博士のような気分だ。こういうのと結婚したら120%尻に敷かれるんだろうなぁ、と思った。

タクシーは彼女の家を目指して一目散に走っていた




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