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3-70.適切な距離
2008 / 04 / 16 ( Wed )
3-70

その夜、彼女は俺のホテルに泊まった。ベッドの中で少し涙声になって俺に懇願する。

「夜の仕事に戻りたくないの」

これはマジかなぁ。

正直、最初の頃は金が必要だという話事態がペテンだと思っていた。きっとたんまり貯金してたり、家に仕送りしてたりするんじゃないかと。でも、このしつこさをみると、本当に金を稼がなければならない理由があるようにも見える。

もし彼女の言うことが全て本当だとしたら、俺はひどいことをしているんだろうか。

でも、じゃぁ俺に何ができるのかとも思う。住宅ローンだか何だか知らないけれども、今後ずっと金が入り用だとしたら、俺はずっと金をあげ続けなくてはならない。いつかそれを諦めたら彼女はまた夜の世界に戻っていってしまう。単純に言えばそういう話だ。もしかしたら期限はもっと早いかもしれないが、それが明示されない以上、最悪のケースはあり得るわけだ。

やはり冷静に考えるとここは止めておいた方が良いような気がする。

ある意味、彼女は野生動物なのだ。外見や仕草が可愛らしく見えても中身は俺なんかよりずっとタフで、したたかで、独立している。だから厳しい生存競争を生き延びているのだし、傷を負うのもある意味彼らの日常かもしれない。温室育ちの俺の甘っちょろい同情なんて現実感がなくて共感する気にもならないだろう。

野生動物を危険から守るのは相当な金と手間がかかるけど、それは結局家畜やペットを作るだけ。要するに俺のエゴだ。しかも、長く続くほど情が移って止められなくなる。

結局のところ、野生動物は野生動物として接するべきなのだ。餌付けをして、ちょっと心が通じた気になって満足するくらいが一番良い楽しみ方なのだ。パンドラの箱は開けるべきじゃないってことだ。

冷静に考えているつもりが、だんだん自分を納得させるための屁理屈になっていくのを感じる。
でも、何にせよ、結論は出ている。あとはまず自分の心の踏ん切りをつけ、彼女が事実を受け入れるのを待つだけだ。

眠ったのは深夜も遅くなってからだった。

翌朝、窓の外が明るくなっても俺たちは眠り続けた。互いに何度か目を覚ましてはいたが、彼女は目を開けることなく眠り続ける。昼過ぎになってハウスキーパーから電話、中国語だがどうやら部屋の清掃をどうするかと聞いているらしい。「不要」と応えて電話を切る。いい加減目が覚めたので起き出すが、彼女は一人で眠り続ける。

まるで眠ることが抗議でもあるかのように夕方まで眠り続けた彼女は、日が暮れるころになってようやく起き上がり、シャワーを浴びると濡れた髪が乾かぬまま服を着て、何も言葉を発することなく家に帰っていった。



3-70b


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