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3-65.金の有難み
2008 / 04 / 16 ( Wed )
3-65

帰国してからもしばらくはいつもの調子だった。夜の仕事をしなくなり、生活も保障された彼女は学生生活を謳歌していた。メールもあったがSMSが頻繁にくるようになった。学校の共用PCを使うよりもこちらの方が便利に感じるようになったようだ。

そんなある日、いつもの様にSMSで会話をしていたら、また金の話になった。彼女はCDウォークマンを持っていたのだが、随分前に壊れていたのだった。

「日本でいいのがたくさんあるでしょ。今度来るときに買ってきてよ」

気軽に言いやがる。安いとはいっても数万はするんじゃないか。

「じゃぁ、クリスマスプレゼントに考えておくよ」

とかわしたものの、先日来続いたおねだりにいい加減うんざりしていた俺はついきつい一言をSMSで送った。

「俺は君の財布じゃないんだよ!?」

彼女の反応は早かった。

「え?それどういう意味?」
「だからお金の大切さが分かってる?」
「分かってるわよ」
「それにしては感謝の気持ちが感じられないよ」
「何を言いたいわけ?」

彼女は逆ギレ気味だ。久しぶりに中国人の怒気に触れる。どうも言い方が彼女のプライドを傷つけたようだ。でも、ここ最近の動きは看過できない。金を出しているのは俺なのだ。でも、そういう趣旨に彼女が屈することはなく、メッセージを交わすごとに話がこんがらがってゆく。しょうがないので一旦うち切り、別途メールを送ることにした。

***

一晩寝て、気持ちを落ち着けてから慎重にメールを書いた。最初は彼女がKTVをクビになったので緊急避難的に助けることになったこと。必要な金額の内訳には納得していないこと。その後もことあるごとに買い物をしたり、おねだりをしたりするけど、これは話がおかしくはないか。一度ちゃんと話し合った方が良いと思う。という内容だ。

彼女の返信は予想に反して冷静だった。

「自分は軽い気持ちで言っていただけなのに、あなたがそう受け取っているとは思わなかった。内訳が必要なら今度メモを書くわ」
「言ってることをメモに書いてもらっても同じなんだけどね」
「多分私のこと誤解してるわ。私が望んでいるのはsimple lifeよ。ただそれだけ」
「君の言うsimple life はbasic lifeじゃないよね」

少しづつまたボタンが掛け違ってくる。俺も別に彼女に赤貧の暮らしをしろと言うつもりもないのだ。ただ、最近の態度がちょっと目に余るだけなのだ。

それがどうしても相手に伝わらない。


3-65b


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