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3-21. 純愛電信
2008 / 03 / 24 ( Mon )
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またもや願いは成就しなかったものの、何やら達成感はある。

なにしろ前回までとは確実に違う。脈があるぞ、というレベルじゃなく、確実に付き合っているレベルになりつつある。これで満足していいのか、と思う一方で、徐々にこの純愛路線になれつつある自分がいた。

***

帰国すると早速帰国報告のメールを打つ。翌日になって返事が返ってきた。
おぉっ、改行している!

彼女の文体に大きな進化があった。今まではSMS調で改行もスペースもなかったのが、ちゃんと段落が作られている。一体どうしたわけだ。最初の話題は、俺がメールに2時間かけていることを聞いて大変驚いたという話。相当インパクトがあったのか、あるいは少し考えるところがあったのかもしれない。

前回会った時の会話を振り返る第一段落が終わって、次の段落は、「Actually, I have a lot want to share with you.」から始まる文章。期待感に胸が高まるが、そこから先が詩の世界に没入だ。

“人は普通自分を守るための鎧をまとっている、心を開くということは自分が丸裸になることなの。”
うーむ、言いたいことは何となくわかるがと考え込む俺。彼女の文章はまだ続く。

“例えば私はお母さんの前では100%丸裸の自分になってしまうわ。そんな私が何をしようとも、どんな失敗をしようとも、お母さんは私をいつも暖かく包んでくれるの”
俺だって、君が目の前で丸裸になってくれたら、暖かく包んであげるよ。
と、ツッコミ半分で読む俺。だってなぁ、こんなの俺のキャラじゃないだろ。男にこんなもん書いて寄越すなよ全く。しかし、彼女のメールはまだまだ続く。

“True love lasts forever という言葉があるわ。もし、本当の愛を誰かと共有できたら素晴らしいことよね。”
そして最後が、
“Hope one day our souls can touch each”

参りました。そうきましたか。これは詩的なラブレターだ。中国は学校で漢詩をしっかり教えてるのかな。しかし関心している場合ではなかった。何しろこれは俺宛なのだ。ということはつまり、返事をかかなきゃならない。一体どうやって?

結局俺は2日かけて苦心した挙句返事を書き上げた。内容は恥ずかしくってここにゃぁ書けない。俺もたいがい恥知らずな人生を生きてきたつもりだが、こいつは堪えた。

実際、人前でパンツを脱ぐよりも純愛な手紙を書くほうが恥ずかしいとは思わなかった。



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01 : 05 : 58 | 筆談小姐3 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
3-22. 苦悩小姐
2008 / 03 / 24 ( Mon )
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そんなこんなで3週間後。メールと電話で仕事をしていたのだが、上海支社のLが、
「そろそろまた直接会って打合せをした方が良いんじゃないか。 Cheers.」
と書いて寄越したのだ。ちなみに相変わらず結語はCheersだ。

上司Mが都合がつかないので金曜日に単身で上海に飛ぶ。

午後からずっと英語の打ち合わせ。言葉よりもボディランゲージの方が多いのは相変わらずだけど、以前よりも大分上手くなっている。彼女との会話がいい訓練になっているのは間違いない。仕事の単語の語彙は全然駄目だが、少なくとも英語で自分の意図を伝えることにかなり積極的になっている自分がいた。

仕事を終え、Lが食事に誘うのを仕事があるからと丁重にお断りする。何しろ今回は翌週月曜の朝から日本で仕事があるので、日曜日のうちに戻らなければならないのだ。となれば、金曜の晩は彼女との時間に使いたい。

そそくさと支社を後にしてスーツ姿のまま彼女の学校に向かう。路上で待つのもこの姿だと何だか目立つので、近くのスターバックスで待つからとSMSを打つ。”OK, See you then:)” なんて返事がくる。相変わらずいい調子だ。

スターバックスでコーヒーを飲みながら待つが、彼女はなかなか来ない。電話でもしようかと思っていたらようやくドアを開けて現われた。俺を見つけてまっすぐこちらにやってくる。何だか様子が変だ。笑顔を作ってはいるが、やや表情がこわばっている。

彼女のために飲み物を買ってきてあげて、そのまま雑談をはじめる。やはり様子が変だ。何か心ここにあらずといった様子で、会話が全然広がっていかない。「どうしたの?」と聞いても「何でもない」と答えるばかりで埒があかない。

と、彼女が唐突に俺に聞いた。

「外科手術ってしたことある?」
「あぁあるよ、以前交通事故で大怪我してね。あの時はひどかった、、」

話し始める俺を食い入るように見つめる彼女。一体何だってんだ。
「手術がどうかしたの?」と聞くも、またもや「何でもない」。
おいおい、そりゃないだろう。

その後、夕食に行ったが、全然盛り上がらない。夕食後でバーにでも行こうと誘う。俺の方から店を指定した。前回、なかなか良かった瑞金賓館だ。入り口までタクシーで行き、薄暗い森の小道を歩いていたとき、急に彼女が顔を押さえてしゃがみこんだ。

「あぁ、もう駄目だわ。耐えられない」

だから何なんだよおい!



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01 : 07 : 32 | 筆談小姐3 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
3-23. 精密検査
2008 / 03 / 24 ( Mon )
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例によって出張で彼女と会うものの、何やら心配ごとがある様子。食事でも全然盛り上がらず、瑞金賓館のバーに行く途中の路上でとうとう顔を押さえて座り込んでしまった。何か問題があることは十二分に理解できたが、原因がわからなかったら助けることも励ますこともできやしない。

暫くの間しつこく問い詰めてようやく彼女から事情を聞きだすことができた。首にしこりのようなものができていて、英語学校のクラスメートである医学生に診てもらったら、耳下腺腫瘍の可能性があると言われたんだそうだ。検査してみなければわからないが、もしもの場合は、手術をしなければならない。顔にメスを入れるので顔面の神経を切って麻痺が出ることもあるんだそうだ。

女の子にしてみればそりゃぁ確かに大変だ。もう気が気じゃないだろう。
今夜会った時から様子がおかしい理由がようやく納得できた。

「そんなにひどいの」
「さわってみたらわかるわ。ほら」

と俺の手をとって自分の首まで引き寄せる。されるままに彼女の首筋に掌を這わせる。無言のまま彼女が首をかしげて俺の目を見る。どう、わかるでしょ?

ビミョー。

そう言われてみればそんな気がするけれども、この程度で気にするのは大げさじゃないか?俺の触り方が悪いのかなぁ、と彼女の首を撫で回すがわからない。結局、明らかに俺が同意することを求めている彼女の視線に耐えかねて、「なるほどね」と曖昧な答えを返した。

再び歩き出し、奥のオープンカフェのようなところに座り、ビールを呑む。周囲は欧米人ばかりだ。オープンテラスに陣取って飲み物を飲んでいると、彼女が急に口を押さえて驚いた表情。

「信じられない、今あの二人キスしてた!」

振り返ると欧米人と中国人のカップルが斜め後ろのソファ席に座っている。周囲に客がいるとはいえ、夜のテラス席は基本的に暗いのでそんなに丸見えという風情ではない。大した話ではないと思うんだけど、こういう時の彼女は田舎の女子高生のように黄色い声を一瞬上げて盛り上がるのだった。

でも、この日盛り上がったのはこの一瞬だけ。病気とは別の話題で何とか盛り上げようとしたが、彼女のノリは相変わらず悪いままだ。結局、何となく盛り上がらないままいつもより早くに店を引き揚げて解散とあいなった。

やれやれ、進展なしだよ。



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01 : 08 : 49 | 筆談小姐3 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
3-24. 方向音痴
2008 / 03 / 24 ( Mon )
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耳下腺というのは唾を作る器官で、おたふく風邪の時に腫れ上がるのはこの部分。また、「こぶ取りじいさん」のこぶは耳下腺腫瘍なんだそうだ。

耳下腺腫瘍は良性と悪性のものがあるが、良性でも20年くらい年月が経つと悪性になることがあるので取ってしまうのが安全らしい。これが簡単にとれれば問題ないのだが、耳下腺の中心を顔面神経が通っていて、これを傷つけると顔面神経麻痺となる。だから手術の際には注意が必要なんだそうだ。

日本じゃ手術の成功率は高いらしいけど、ここ中国じゃどうなんだろう。

やや俺も不安になってきた翌日の夜。例によって学校の前で待合わせて夕食。昨日よりはやや表情が明るい。実際、悩んでも始まらないのだ。心配ならまず病院にべきだし、悩むのは診断結果が出てからでも遅くはない。今日会ってまだ暗い顔をしていたらそういって励まそうと思っていたが、自力で復活したようだ。

レストランで夕食をとり、外に出て次の行き先を相談。衡山路に行こうという話になる。

「じゃ、反対方向だね。道路を渡ってタクシーを拾おう」という俺に対して、
「こっちの方向でいいはずよ」と彼女。

俺もだいたい上海の土地勘は出てきているので、それは間違いだと主張するが、そんな俺に対して、「上海に住んでる私が言うんだから間違いないわ」と彼女は聞く耳を持たない。結局、手を上げてタクシーを止めてしまった。

車内に入って運転手に行き先を言うと、運転手が「はぁ?」という感じで聞き返す。彼女が再度行き先を告げ、そのまま一言二言やりとりがつづく。結局、運転手がしょうがないなぁという調子でぶつぶつ呟くと、いきなり大通りの真ん中でUターンを始めた。対向車線を走る車がとぎれるまで、こちら側の車線全部をつぶした形で停車する。後ろの車を通せんぼだ。そして、対向車線の車の列に割り込む形でぐるっと車を回頭させた。

「ほらぁ、言わんこっちゃない。逆じゃぁないかぁ!」
俺が勝ち誇った様に言うと彼女も笑いながら非を認めた。

タクシーで15分ほど走って衡山路のちょっと南にあるバーへ。洋館を改装してバーにしている店なんだそうだ。例によってオープンカフェの席を探し、薄暗いテーブルに二人で腰を下ろす。キャンドルに火を灯し、注文した飲物を一口すすった途端、彼女が大きくため息をついて下を向いた。

ありゃりゃ、また鬱になっちゃったよこの小姐は。



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01 : 09 : 55 | 筆談小姐3 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
3-25. 重い悩み
2008 / 03 / 24 ( Mon )
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テーブルについた途端、欝になって落ち込む彼女。

病気の疑いがあることが気になって仕方ないのかもしれない。俺も何とか励ますがどうにもならない、そうこうするうちに、彼女の定番ネタに流れてきた。昼は学校、夜はKTV。自分をの夢のためとは言いながら、愛する母親に嘘をついている自分が許せない。演歌のような彼女の身の上話は、正直少し飽きてきているんだけれども、当の本人が大真面目なので付き合わざるを得ない。

そんなに嫌なら俺が多少援助してあげるよ、と気をきかせてこっちから振ってみる。正直、中国小姐と金が絡んだ話は山ほど聞いているので、自分だけが例外になるとは思っていない。しかし彼女は断固としてそれを拒絶した。
「駄目よ、そんなことをしたら私たちの関係がpureなもんじゃなくなってしまうわ」

ピュア。ねぇ。。

KTVで出会った小姐を下心一杯でデートに誘った俺。2日目にホテルの部屋に連れ込んだのを初めとした度重なる狼藉の数々。そんな俺に対してピュアいう言葉を使うことにやや違和感を覚えたことは正直否定しないが、一方で、気持ちはわからないでもなかった。

しかしこれを小姐の純情だと受け入れるべきか、したたかな小姐が金交渉に向けて布石を売っていると考えるべきか。どっちとも考えられるような微妙なコースに球が来ているのがまた悩ましい。

そんなことを考えているうちに話はまた病気のことに戻る。とにかく病院に行くべきだろうと主張する俺。でも、月曜日にならないと外来は開いてこない。

「一人で行くのは心細いわ。一緒に行ってくれる?」
「行ってあげたいけどそれはできない。明日の飛行機で戻らなきゃならないんだ」

実際、こういう時には一緒にいてあげたいんだけど、仕事もあるし、そもそも滞在延長した時のもろもろの手続きが大変そうで、とてもじゃないけどやれる自信がない。

とするうちに、彼女が机に突っ伏した。

「No. I’m sorry. It’s too heavy. I need to go home now」

まだ時刻は10時前なのに、バーを早々に切り上げてタクシーで帰途につく。

最早見慣れた道を通って彼女のマンションの前に到着。先に下りた彼女が扉の前でこちらを振り返る。何かを言おうとして、また黙り、こちらを凝視したまま再び何か言いたげなそぶりを見せたまま十数秒経過するが、結局、「I’m sorry. Good night」とだけ言って扉を閉めた。

あぁ、駄目だこの週末は。



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01 : 11 : 22 | 筆談小姐3 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
3-26. 医療支援
2008 / 03 / 24 ( Mon )
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前回の出張は大きな前進があって極めて有意義だったが、今回は成果の面では惨憺たる状況だ。キスはおろか手もつないでない。スキンシップといったら首を撫でただけだ。別れ際に彼女が逡巡したところを見ると、彼女としてもこうなった顛末に対して内心思うところはあったんだろうけど、前回の勢いがそがれてしまったのは事実だ。

しかし、病気の疑いがあるというなら無理もできない。帰国しても半分くらいは作り話じゃないかと疑う自分がいるのだが、実際にその場面に直面してみると、なかなかクロだと断定できるものではない。で、少しでも真実の可能性がある以上、誠実な対応をせざるを得ない。

というわけで、少しもやもやと疑惑の迷宮に入りながらも、意を決して火曜日の朝に彼女に電話をかけた。
聞きなれたコールが3回続いた後で彼女が出る。寝起きのけだるい感じの声が、相手が俺だと分かった途端、ちょっと明るくなった。

「昨日月曜日だったけど、病院に行った?」
「行ってない。結局学校があったし」
「とにかく医者に診てもらわないと話が始まらないよ」
「でも手術とかになったらどうすればいいの?」
「中国の医者が心配なら、日本においで。病院を紹介してやるから」
「そんなことできるの?」
「上海支社の弁護士に手伝ってもらうよ。召喚状があれば日本のビサは出るし」

実際どこまでできるのかはよくわからない。でも、なりふり構わず動けばできないこじゃないだろう。本当に病院の診断を受けて診断書が出ているならペテンじゃないわけだから、ここまでする価値はあると思った。

彼女は趣旨は理解したようだ。でも、病院に行く勇気がない。それどころか、心細くて俺との電話を切りたくないという様子だ。くどくどと同じ話を繰り返す。
と、急に彼女がある質問を発した。言葉が聞き取れず何度か聞きなおす。よく聞いたら凄く単純な質問だった。

「How much do you like me?」

ハウマッチ?
何故か一瞬、大橋巨泉の顔が頭をよぎる。
それはともかく返事をしなきゃ。でも意外な質問に良い答えが思い浮かばない。

「ベリーマッチ」

彼女が一瞬黙り込む。
あぁもう、なんだか子供みたいな答えだよ。もっと気の利いた答え方があるだろうに。

ふとビル内の壁時計が目に入る。
時刻は始業時間を過ぎている。ヤバイ、遅刻だ。

「もう俺行かなきゃならないから電話を切るよ。いい?絶対今日病院行くんだよ」

彼女にそう言い含めて俺は一方的に電話を切った。



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01 : 12 : 34 | 筆談小姐3 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
3-27. 本番強要
2008 / 03 / 24 ( Mon )
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その後しばらく、彼女からは何の音沙汰もなかった。病院に行ったんだろうか?結果は?といろいろ気にはなったが俺も仕事が忙しくて電話やメールをしている暇もなかった。
1週間ほど経ったある晩、会社での会議中に携帯が鳴った。見ると彼女からのSMSだ。

“How are you in these days? Is everything fine? I think about you a lot, and our relationship and my problem since you left”

何か様子が変だ。病気の話かな。

会議が終わり人気のなくなった会議室で電話をかけた。コールが始まるまでの時間の長さが、彼女のいる場所との距離を感じる。1回目がいつもの様にノイズ交じりの呼び出し音、2回目からはクリアな音質になる。3コール目で彼女が出た。中国語で電話に出る彼女に英語で話しかけ、向こうも英語モードに切り替わる。後ろで車のクラクションの音が聞こえる。外にいるようだ。挨拶の後、今の時間は仕事じゃないの?と振ってみる。

彼女の夜の仕事は8時集合だ。そこから全員でメイクと着替えを行い、集合してチェックを受ける。メイクがうまくできていない娘は客に会わせられないといってやり直しだ。高級KTVのせいなのか、品質管理が徹底している。集合時刻に遅刻すると罰金になるので彼女は夜はいつも急いでいるのだ。時計を見ると日本時間で夜の9時過ぎ。集合時間をちょうど過ぎた頃だ。彼女は呟くような声でこう答えた。

「3日前から仕事には行ってないの」
「何かあったの?」

不審に思って尋ねる。1週間に2日までの休みは認められてはいるものの、3日連続というのは尋常じゃない。やはり病院での診断結果が悪かったんだろうか?

「病院に行ったの?」
「ううん、行ってない」

病院じゃないとすると何なんだろう?

「何があったの?」

と再度問いかけると、彼女はようやく語り始めた。

「3日前にKTVでついたお客さんが私を気に入って持ち帰りたいって言い始めたの」
「でも君はそういうグループじゃないだろう。俺も断られたし」
「でも、そのお客さんは金持ちのお得意様だったの」
「。。。」
「で、ママは後で私を呼び出して、そのお客さんの泊まってるホテルの部屋に行けと言ったの」
「それで」
「私は最初嫌だって言ったの。そしたら、ママは物凄く怒るの。私のわがままのせいで大事なお客さんの機嫌を損ねる訳にはいかないのよ」

彼女の声は泣き声に変わっていた



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01 : 13 : 53 | 筆談小姐3 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
3-28. 意思決定
2008 / 03 / 24 ( Mon )
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病気の話はどっかに行ってしまって、彼女が客にヤラれかけた話になっている。
いや、そもそもヤラれかけたのか、ヤラれてしまったのかどっちだろう?

「で、結局部屋には行ったの?」

と、一番気になっている質問を恐る恐る聞いてみる。

「行ってないわ」
「そう」

とりあえず一安心。でも彼女の話は終わらない。

「最後まで断り続けたら、ママがもう明日から店に来なくていい、って言ったの」
「つまり、クビってこと?」
「うん」

あいやー、問題はそっちでしたか。

「全然収入がないの、私この先どうやって暮らしていったらいいの?」

そりゃあんた、喫茶店でバイトするとかお花屋さんで花でも売るとか、いろいろあるだろ。

とは思ったが、茶化したりできる雰囲気でもない。彼女はさっきからもうずっと泣き声だ。後ろでは車の走る音が聞こえる、道路沿いで泣きながら電話してるわけだ。

「仕事とか探せないの?」
「夜の仕事はもう嫌」
「昼の仕事は?」
「学費も含めて稼げるような仕事なんてないわ」

彼女が何を言わせたいかは分かっている。俺もそれはかねて想定していた言葉だった。その時が来たというだけだ。少し間を置いてから、俺はその一言を口にした。

「じゃぁ俺が出してあげるよ」
「。。。」

しばらく絶句する彼女、少し間を置いてから

「ほんとう?」
「本当だ。暫く仕事で行く用事はないんだけど、来週末には自分でチケットとってそっちに行くよ。それまでくらいなら自分で生活できるだろ」
「うん」

最早泣き声ではなく、少し怯えたような、呟くようなトーンの声に変わった。クラクションを鳴らしながら車が通り過ぎる音が聞こえる。そして、その音が収まった時、再び彼女の声が聞こえた。

「ありがとう」



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01 : 15 : 05 | 筆談小姐3 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
3-29. 自費出張
2008 / 03 / 24 ( Mon )
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電話を切って深く息を吐いた俺。英語の問題は抜きにしても、結構疲れる電話だった。
しかし、彼女も大変だ。

腫瘍の疑いがあって病院に行かなきゃなんて話をしている矢先に、職場でトラブルがあってクビになるなんて。激動の人生とはまさにこのことだ。

っつーか、嘘だよな絶対。

まぁしかし、嘘にしてもなかなか真に迫った演技だった。それはそうと実際のところ幾らくらいになるんだろう。相手は仮にも高級KTVで働いていた小姐だ。ネットや何やらでいろいろ調べて、中国小姐にを囲っている人がいくら支払っているかなんて話はよく読んでいたが、まぁ結構このうちの上の方になってしまうことは間違いない。

でもこういう話を決める場合、後の関係を考えたらごちゃごちゃ値切り交渉をするのではなく、スパッと高めの金額一発提示で交渉を決めた方が良いなんて話も聞く。しかし結構な金額ですぞこれは。

他人事として見ていたのと、自分がいざやり始めるのとでは実感が全然違う。彼女が学校を卒業したら就職するからまぁ収入は出るとして、卒業まで多分1年半くらい。18ヶ月分だから月額をかけて。などと総額を計算して一人ビビってみたりする。こんだけの金を使えるんだったら、KTVで何人と遊べることだろう。

いろいろ悩みは尽きないが、まぁゲームは始まったわけだ。ここから先は金を張ったから見れる世界もあるだろう。四の五の言わずにその世界を楽しむとするか。

と、納得できるところまで考えつくした時には翌日の明け方近くになっていた。今日は土曜日なので会社に行く必要は無い。徹夜明けのまま、俺は格安チケットをネットで探し始めた。

格安チケットというと日本の航空会社では駄目で、結局、中国国際航空の便で往復することとなった。ホテルの予約もして一通り旅程を決めた。金曜日早退して夜便で上海に入り、日曜日に戻ってくるプランだ。夏場で混んでいるシーズンだと言うこともあり、日曜は朝便になってしまった。折角なので日曜一杯いたいところだがそれも許されない、しかも値段は割高で結構な金額だ。今週の金運は最悪なのに違いない。

旅程が決まって彼女にメールする。彼女の方はといえば、一旦郷里の両親のところに戻ってくるとのことだった。ずっと母親に会いたいと言っていたし、仕事をクビになったのは丁度良い機会なのかもしれない。そうこうするうちに出発する週末が近づいてきた。

しかし、そこで予想外のトラブルが発生した。



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01 : 16 : 20 | 筆談小姐3 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
3-30. 旅程混乱
2008 / 03 / 24 ( Mon )
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週の半ばから危ないとは思っていた。一縷の望みを託してはいたものの、週末に近づくにつれて、それは避けられない壁として立ちはだかることがはっきりした。

台風が、上海を直撃しようとしていた。

金曜日の朝から旅行会社の担当者と何度かやり取り、非常に微妙な状況だ。会社からネットに接続して発着状況を見つめる。日本は良い天気なので何だか不思議な感じだ。何とか望みをつなぎたかったが、午後2時過ぎに今日は飛ばないことが決定した。欠航じゃなくて1日遅延ということになるらしい。

SMSで彼女に連絡。彼女もまだ故郷の街から帰れないようだ。それもそのはず、台風は彼女の故郷を経由で上海を襲っているのだ。国内線で移動しようとしていた彼女にとっては最悪の状況だ。

「でも台風じゃ仕方ないわ。明日はきっと会えるわ」

と彼女からメッセージが来る。今日はSMSが大活躍だ。しかし、明日出発できたとしてもたった1泊の旅行だ。結構しんどいものがある。

しかし今回限りは延期するわけにはいかない。彼女は俺を当てにしているので金を渡せないと生活に困ってしまう。ま、金の話は置いておいても、このタイミングで行かないと熱が冷めてしまってよろしくはない。

そして翌日。旅行会社の案内の通り午後から空港に向かうが、そこは長蛇の列だった。カウンターをほぼ1週している。ぐるっと回って最後尾に並んだものの、列は遅々として進まない。一体何時になるんだろう。

3時間ほど並んでようやくチェックイン。何と、俺が乗るはずだった便は満席になってしまったそうで、JAL便から席を借りてそちらに乗って欲しいという話になった。何と、上海着が夜の9時半だ。

まじかよ、俺、翌朝9時半の便で帰国するんですけど。

早速、彼女にSMS。彼女の方も国内線の空港で苦戦していた。こちらと同じ様に昨日の遅延客でごった返しているらしい、5時間半も待った挙句ようやくチェックインして、上海到着は8時だそうだ。ま、ある意味丁度良いといえば丁度良いんだけどね。

どっと疲れが出たけれども、まぁ、矢は放たれたわけで、今さら止めるわけにも行かない。俺は元気を回復しようとレストランに向かい、夕食をたらふく掻き込んだ。

もう、食わなきゃやってらんねぇよ。



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01 : 17 : 31 | 筆談小姐3 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
3-31. 弾丸旅行
2008 / 03 / 24 ( Mon )
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上海に着いたのは定刻の9時半。イミグレーションの列に並びながら彼女にSMSを打つ。

「今どこ?もう着いた?」

彼女もここ浦東空港に到着するはずなのだ。彼女からすぐに返事が来た。彼女の便はさらに遅延したらしい、先ほど浦東についたところだというのだ。

「今、タクシーの列に並んでいるの。荷物が多いので先に帰るわ」と彼女。「後で会いましょう」

しかし、今は既に10時前。一体何時に会うのやら。。

入国審査を終え、空港で大量の現金を両替。100RMB札までしかない人民元は、両替すると笑ってしまうほどの札束になる。一体俺は何をしに来たんだろう。何かの買い付けにでも来たのかよ。

そしてタクシーに乗り込んでホテルに向かう。ホテルには事情を説明していあるのでこんな時間のチェックインでも問題はない。1泊少ないが宿泊しないわけじゃないのでキャンセル料はかからない。

少し気取った風情のフロントマンを相手にチェックインの手続きをしていると、後ろで伝票を整理していた女の子がふと顔を上げて俺のことを見た。

「I remember you. Have you stayed here?」
(あなた見覚えがあるわ。以前泊まった?)

よく覚えているもんだ。しかもそれで話しかけてくれるなんて嬉しいじゃないか。

「Yes.. about 4 months ago」

俺も笑顔で答える。前に泊まったのはこちらの支社の中国人Yの紹介だ。夜の帝王のYにそそのかされて、その日の深夜部屋で乱痴気騒ぎをやったんだった。でも彼女はそれは知らないんだろう。フロントでの手続きと、そうか、ビジネスセンターを使うときに対応してもらったんだった。その時の印象だけだろうな。

彼女はフロントマンに何事か話し、作業を交代した。手続きをしながら話しかけてくる。

「ご出発はいつ頃で」
「明日の朝一番だ。タクシーを呼んでおいて貰える?」
「何時に呼びますか」
「朝7時に」
「え?」

俺の答えを聞いて女の子が吹き出した。あんた一体何をしに来たのよ、って感じだよな。確かに、俺もそう思うよ。

「because of typhoon」

と理由を一言だけ説明すると、ああなるほど、という表情。そして

「お疲れ様です」

といきなり下手な発音の日本語で話しかけてきた。英語は流暢なのだが、日本語も勉強しているらしい。

「謝謝。好日本話」(ありがとう、日本語上手だね)

と俺もへたくそな中国語で対応すると、彼女は肩をすくめて笑ってみせた。



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3-32. フェロモン
2008 / 03 / 24 ( Mon )
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フロントで女性従業員が声をかけてきた。以前泊まった時のことを覚えていたらしい。対応していたホテルマンを追い払って作業を引き継ぎ、俺にいろいろ話をかけてきた。何だか結構イイ感じになっている。

部屋に入り、メールをチェックするためにビジネスセンターに向かう。ネットにつながれたPCをしばらく借りてから精算しようとすると、係員の男が金を払えと言い出した。えー、宿泊客なんだから部屋付けにしてくれよ。

もめていると後ろから女の声がした。振り返るとフロントにいた女性従業員だ。何事かと目で聞くので、下手な英語で事情を説明する。彼女が係員の男に交渉してくれ、無事部屋付けにできることになったようだ。

彼女が俺に手順を説明してくれる。よせばいいのに日本語でだ。

「ここの紙があります。あなたのサインは書いてください」

たどたどしい言い方で照れくさそうに日本語で言い、伝票を両手で差し出す。なんだかラブレターを渡されたみたいな気になる。それを机に置いてサインしてる間、彼女は肩を寄せるようにして横から覗き込む。サインをした紙を彼女に渡す時に、華奢な指先にちょっと触れ、暖かい体温を一瞬感じた。

「ありがとうございました」

と言う声を背にしてビジネスセンターを出る。

うーん。かなりイイ感じなんですけど、どうしたものか。
今日の俺は何か変な汁が出てるのかもしれないなぁ。
フェロモンってやつですか。

未練を振りきってエレベータに乗り部屋に戻り、荷物をほどきながら彼女にSMSを打つ。しばし待つが返事がない。中国用の携帯を見直すと何やらエラーを起こしている様子。何かメッセージが出ているのだが、中国語なのでよくわからない。しょうがないので彼女に電話だ。

「今どこに居るの?」
「SMS送ったけど見なかったの?」
「携帯電話の調子が悪くてSMS見れないんだ」
「今新天地に向かってるわ、あそこのスターバックス前で待ち合わせしましょ」
「了解」

土曜日夜の新天地。台風一過で地面が濡れているが、雨の上がった週末の夜は意外にも人出が多い。タクシーも大渋滞だ。ようやく新天地について彼女を探すがまだ着いていないようだ。電話をすると近くまで来ているとのこと。タクシーが全然動かないんだそうだ。「もうここで降りて歩くわ」と言って電話を切る。

5分経って彼女が現われた。
始めてデートした時の様に少し息を切らして、まっすぐにこちらを見つめる眼があった。



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3-33. 待望再会
2008 / 03 / 24 ( Mon )
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もう11時を過ぎているので空いている店もない。最早俺たちのお得意になりつつある台湾料理の店に行こうという話になって二人で雨上がりの歩道を歩き始める。

「久しぶりの故郷は楽しかった?」
「うん」

嬉しそうに頷きながら言葉を続ける。

「お母さんが私の干支のペンダントをくれたの。お守りになるんだって」

と、胸元のペンダントをつまんでちょっと上げて見せる。真夏の薄い服の間から、細身の身体にしては意外に豊かな胸が谷間をくっきりと作っているのを発見してドキッとした。これは思わぬ拾いものだ。いやいや、そんな不純なことを考えちゃいけない。

でも正直、彼女の生活の面倒を見てあげる約束をしたんだから、そういうことが無いとは考えにくい。というか、何でたった12時間の滞在のためにわざわざ東シナ海を往復するかといえば、まさにそのためとしか言いようがない。こうしている間にも期待は高まるし、時間がどんどん短くなってゆくのが落ち着かない。

胸について言えば因縁がある。

北京で最初に知り合った彼女は、顔はどちらかというと不細工だったが胸は巨乳に見えた。心が通じたし、まぁ胸が大きいからまぁいいだろと自分を納得させていた部分があったのだ。が、結果、開けてみたらパッド数枚入れてた貧乳だった。まさにムードが盛り上がったところで判明した事実だけに後戻りするわけにもいかず、忸怩たる思いのまま事に及んだのであった。

しかし今度は大丈夫だ。何しろ服の上から覗いているのは生のそれであり、明らかにパッドではない。しかもそれはパッと見でもはっきりわかるほどの谷間を作っている。正直、彼女はスリムで引き締まった身体つきをしているので胸については全然期待していなかった。だから、谷間を見たときはまさに望外の喜びだった。台風のせいでここ数日不運続きだったが、神はまだ俺のことを見捨てていなかった。

一瞬で神との対話にまで到達した俺をよそに彼女は自分のことを話し続ける。

「そういえば、故郷でお医者さんに行ったの。首のしこりは腫瘍じゃないんだって」

おいおい、そりゃ芝居だったってことじゃないの。俺が金を出すと言わなかったら診断は多分腫瘍だったんだろう。それも手術費用が高額な。ま、でも過去のことはもうどうでもいい。重要なのはこれからのこと。今夜のことだ。

台湾料理の店に入り席に着く。彼女が言った

「何食べようか?」

食うのかよ。


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3-34. 我欲同衾
2008 / 03 / 24 ( Mon )
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時刻は夜の11時半。俺は明日の朝7時にはホテルからタクシーで空港に向かわなきゃならない。そもそも今回の目的が別にあるにも関わらず、彼女はこの台湾料理の店で食事をするつもりなのだ。

ほどなく料理が運ばれてくる。肉料理が数皿と野菜系もの。そして食後のはずのデザートも一緒に運ばれてくる。俺もこうなったらやけくそなので、食事をがつがつと食べ始める。気合いで思ったより量を食べられた俺だが、彼女はその5割増しの量は優に平らげた。

一通り食事が済んで時計を見ると時刻は1時半。もう時間が気になってしようがないのだが、それを表面に出さず。

「じゃ、そろそろ出ようか」

と彼女に話しかける。

「俺の部屋までおいでよ」

意外なほど簡単に彼女が頷く。
そのまま会計を済ませて、店を出て、タクシーを拾ってホテルに向かう。チェックインの時にいたフロントの女の子がまだいたらどうしようかと少し気になったが、深夜のフロントは人影がなく、俺たちはそのままエレベータホールまで入り込んだ。

二人でエレベータにのって部屋に上がる。この娘と一緒にこういう場所に居るなんて何だか変な感じだ。以前部屋に連れ込んだときは無理やりだったんだが、今回は合意済みってわけだ。何の緊張も抵抗もない。エレベータの扉に俺たち二人の姿が映る。これってお似合いなんだろうか。

部屋に入ってソファに腰を下ろす。今回はこういうことを想定して少し良いホテルを奢ったのだ。正確に言うと、アパートメントホテル。以前Yに紹介してもらって泊まったホテルだ。あの時はベッドルーム二つだったが、今回は一つ。だけど別室でLDKがある。設備は質素だが部屋数や広さはスイートルーム並だ。

しばらくソファで会話しながら彼女の肩に腕を回す。全く抵抗しないのは彼女も分かっている証拠だ。そのまま唇を合わせる。ここまではこれまでにも来たことがある。ただしここは公共の場所ではないのでもっと踏み込めるわけだ。唇を離さず彼女をソファに押し倒す。身体をまさぐり、胸に手をかけたとき、彼女が俺の手をおさえて

「待って」

と言った。

「どうしたの」

と聞く俺。

「私、あなたに言っておかなければならないことがあるの」
「何だい?」
「わたし、女じゃないの」

え”?


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3-35. 改造人間
2008 / 03 / 24 ( Mon )
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ホテルの部屋に彼女を連れ込んで押し倒した俺。もう体勢万全で身体をまさぐり始めた矢先に、彼女から「私は女じゃないの」という発言。俺は絶句した。

まじかよ。と一瞬、彼女の眼を見て止まった俺。次に全く反射的に、彼女の股間をむんずとつかんだ。俺と同じ怒張した一物の感触があったら一巻の終わりだ。でも確かめずにはおれなかった。でも、そこには何もなかった。彼女は顔を抑えて「Oh! No!」と叫んだ。

“女じゃない”というのは何かの比喩だったようだ。

まったく紛らわしい。この非常時に面倒な言い回ししてんじゃないよ全く。そう思ったが口には出さない。しかし、一体何なんだ。彼女に問いかけてもなかなか答えない。

「私が話したとしても、私のことを嫌いにならないって約束してくれる?」

いや、そりゃ内容によるだろう実際。
しかし、ここはそんな正論を振りかざす問題じゃない。俺も役を演じきらないといけない。

「嫌いになるもんか。君の事を愛してる。何があっても全て受け入れるよ」

臆面もなく俺は言い切った。こういう思い切りのよさが俺の長所だ。彼女は俺の真意をさぐるように眼をしばらくじっと見た後、意を決したように話はじめた。

「昔ね、私の胸は一方だけが大きかったの。最初の彼はそれをすごく気にしてたの。」
「それで、どうしたの」
「それで、大きい方を小さくして、小さい方を大きくしたの」
「どういうこと?」
「バランスを整えたのよ、整形したの」

なるほど、そういうことか。女の象徴であるバストを人工物にしてしまったので、もう女ではないという比喩になるわけだ。何だそんなことか、拍子抜けしたよ。

「私のこと嫌いになった?」

再び問いかける彼女の目は真剣だ。

「そんなことないよ。全然気にしないよ」

俺はそう答えて微笑んだ。

「ちなみに、彼は喜んだの?」
「ううん、お前はもう女じゃないって言って、嫌われちゃった」

ガキだな全く。俺は他人事ながら腹が立った。
まさかこの娘、これがショックで故郷を捨てて上海に出てきたんじゃあるまいな。

彼女はまだ話を続ける。

「でも、私は大きい方と小さくして、小さい方を大きくしただけなのよ。バランスを整えただけなの。両方大きくしたわけじゃないわ。でも彼はわかってくれなかったの」

いや、それは多分論点が違うと思う。
思ったけど、口には出さなかった。


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3-36. 昭和の香
2008 / 03 / 24 ( Mon )
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男はよく女の胸の話をする。胸が大きいと何だか得したような気持ちになる。つい女の子本人にも言ってしまうこともある。でも、女の子は男が考えているよりも胸のことを真剣に考えていたりするのだ。

初めての彼氏が気にしてたので思い切ってやったというのは、考えてみたら一途な思いだからこそなせる技だったのかもしれない。整形した彼女を見てドン引きした当時の彼氏も、当初は馬鹿だと腹を立てたが後で考えてみると仕方ないことかもしれない。何しろまだ20歳そこそこ。しかも言っては悪いがまだ文化的に開かれて間がないところでは、ちゃんと対処できないのも仕方なかったかもしれない。未知なる物は怖いのだ。

しかし俺はよくよく胸に縁がある。北京で最初に知り合った小姐は、外見は巨乳だったが、実はパッド数枚を重ねた偽巨乳で、服を脱いだらBカップ相当だった。そして今回は美乳かと思ったら偽乳だった。俺は前世で何か悪いことでもしたのかな。

さて、話を戻す。

彼女の懸念を解決した俺は、作業を再開した。整形した胸が露わになる。形は良いが小振りの胸だ。どうせなら景気よくFカップくらいにしたら良かったのに、などと不埒なことを思いながら手を伸ばす。シリコンを揉んでも気持ちよくないよな、などと思いながら、生身の部分を探すようにして指を這わせる。この辺は目や鼻の整形とは種類が違う。神経が通っていない部分があるというのは妙な感じだ。

さらに愛撫を続け、手を下におろしてジーンズを降ろす。中国にしては珍しい女性らしいパンティに手をかけて下ろそうとした時に彼女がいきなり俺の手を押さえた。

「駄目」
「え?」
「今日は駄目。心の準備ができてないの」

なんですとぉ~~??

ここまできてまだ刻むのかあんたは。一体俺は何パットしたらカップインできるんだ。

困惑する俺の目を見ながら彼女が「ごめんなさい」とつぶやく。あぁもう、しょうがないな。この前キスをして、今日はその次まで。Aの次のBで、Cはお預けってことだ。昔のラブコメかよこれは。昭和の香りがするぜ全く。

心の中で毒づきながらも俺はキスと抱擁を続ける。
かなり長時間経って、ふと唇を離して目を開けると彼女の顔がそこにある。
目をつむったまま、唇が俺を求めてわずかに動いた。

もう何時間こんなことしてるだろう、いくら金のためでもここまではしないよなぁやっぱり、などと思いながら、煮え切らぬ思いが頭を巡り続けた。


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3-37. 条件交渉
2008 / 03 / 24 ( Mon )
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外が明るくなり、鳥のさえずりが聞こえるようになり、そして、窓の外の街が徐々に活気を帯びてきた。
それを耳で感じながら、彼女を抱きしめ、身体をまさぐり、唇を幾度となく合わせた。その時、突然携帯のアラームが鳴り始めた。起きる時間だ。

帰りの便は朝の9時だ。今回は台風のお陰で弾丸ツアーだったのだ。それでも一晩寝れるはずだったが、結局、徹夜の弾丸ツアーになってしまった。目覚ましを止めて彼女にもう支度する時間だと告げる。

彼女は身体を起こして服を整え始めた。身体の下でくしゃくしゃになってしまった上着を見て、あーあ、とばかりにペロっと舌を出して見せる。Hをしていないのに、二人の距離が凄く近くなった気がする。昔の人はこうやって恋をしていたのかな。ま、これはこれで悪くない。

支度が済んだ頃、俺は今回の旅の本題を切り出した。

「で、いくら月に必要なの?」

彼女の言った金額は結構な額だった。次にその内訳を聞いて、彼女の言うのをメモに書き留める。なんだか相当水増しされている気がする。でもまぁ、ここで交渉してもしょうがない。「わかった」と言って分厚い封筒を取り出す。ま、ある意味想定していた通りの金額だったわけだ。渡しながら彼女に言う

「これは君のこと好きだからあげるんだからね。もし俺のこと好きじゃなくなったら言ってね。きれいに関係を終わりにしよう」
「・・・。なんで今からそんなこと言うの?」

彼女は不思議そうに聞き返した。ある意味言わなくても良いことだったと思いながら、俺は質問には答えずに次の話題に移る。

「住むところはどうするの?」

彼女はKTVの同僚とルームシェアして住んでいるのだ。

「今のままだと思う。3人で住んでいて安いし」
「別のところを借りたら?」

ネットの掲示板の入れ知恵もあり、KTVの人脈はなるべく断ち切ってしまいたいと思った。

「新しいところを借りなよ。そしたら俺も泊まれるし。高いホテル泊まるより俺たちにとっては合理的でしょ」

微妙にweという言葉を使って問題を二人の問題にすり替える。それを聞いた彼女は目を輝かせた。一緒に泊まれるというところに反応したのか、合理的というところに反応したのか。

「いい考えね。じゃ、ルームメイトに話をするわ」

交渉成立。

時計を見るともう出発の時間だ。あわてて荷物をまとめると呼んであったタクシーに飛び乗る。外で見送る彼女に手を振って、日本への帰り道についた。


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3-38. 大願成就
2008 / 03 / 24 ( Mon )
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帰国した日の夜、彼女からメールが届いた。

“夜の仕事をしなくてもよくなったので、学校に長い時間いれるようになったの”

彼女はそう書いてきた。

“本当にありがとう”

心なしか文面が晴れ晴れとした気持ちに溢れている。そしてメールの最後には

「Don’t forget me」(あたしのこと忘れちゃいやよ)

結局のところ、金で愛情を買った形にはなっているのだけれども、それでもこういうストレートな言葉を受け取るのは嬉しい。

***

ほどなく次の出張が決まる。たった2週間後だ。今度は予定通りのスケジュールだ。前回の様に金曜日に打合せをすませ、その日の夜から自由行動だ。

彼女は今日は学校を休んで家探しをしてる。断続的に見るSMSを読む限り、今日で3件程度回ったみたいだ。

人民広場の近くのやつはあまり良くなかったらしい。そりゃ中心部は割高だからあの予算じゃぁろくなところがないだろ。そうするうちに、予算ちょっとオーバーだけどいい物件が見つかったようだ。どうしようかなぁなんて書いてよこすけど、きっと気持ちは決まっているに違いない。

夕方、これまで何度か待ち合わせに使ったスターバックスで彼女と落ち合う。タクシーに載って上海料理の店に。食べ終えた後、お茶をして話をした後、ホテルに一緒に戻ろうと誘う。そう、今回はいよいよCまで(昭和風)ですよ。

部屋に入ると前回の続きのような雰囲気になった。違うのは、俺が彼女をお姫様だっこしてベッドに運ぶこと。きゃぁきゃぁ歓声を上げる彼女をベッドに放り投げると、いよいよ本題に入った。

ルパン三世みたいにジャンプしながら服が全部脱げたらどんなに便利だろうと思う。もどかしく服を脱ぎ、服を脱がせる。布団をめくって中に入るのは省略だ。長いキスから唇を離してふと彼女と目を合わせる。まっすぐこちらを見て微笑む彼女の口から歯がのぞく。白く輝ききれいに並んだその歯を見て、ふと、中国人の野生を感じた。

***

翌朝、横で寝ている彼女がビクッと身体を震わせるので目を覚ました。
カーテン越しに入ってくる明るい朝日の中で、彼女はまだ熟睡してる。愛らしい寝顔を眺めながら再び感慨にふける、ここまで長い道のりだった。やってみれば結局他の女と一緒だけど、そこまでの道のりが長いと感慨も違うもんだ。

彼女が寝返りを打った。

さて、どうやって起こしてやろうか。
そして二人でどんな一日を過ごそうか。



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3-39. 敷金礼金
2008 / 03 / 24 ( Mon )
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翌日昼間は別行動だった。
彼女は学校に行き、もし候補となるマンションの大家の都合が着けば、授業の合間に部屋を見に行くんだそうだ。散発的にSMSでやりとりをしているうちに夕方になった。

いつもの様に彼女の学校の前まで迎えに行き、今日は久光の近くのレストランに向かう。上海料理だ。SMSでの話の続きを彼女がしはじめる。新居の話だ。今日見た部屋は彼女的にはかなり気に入ったらしい。でも家賃が若干予算をオーバーしている。

「どうしたらいいと思う?」

と彼女が問いかけるのを聞きながら、ふと、俺が彼女に毎月あげる金を増額しろということかな、などと考えてしまう。金が絡むとどうしても素直に物事を考えられなくなる。最初から割り切ってればまた違うんだろうけど、妙に情が入ってからこういうことするとアレだよなやっぱり。

「ま、良いと思う方を選べばいいんじゃないの。生活費はやりくりできるでしょ」

慎重に言葉を選びながら答える。彼女にそういう意図があったのかなかったのかは分からないが、そのまま彼女は納得したようにうなづき、そのマンションに決めることにしたようだった。

「場所はどの辺?」
「川のそばよ」
「へぇ。。」

川べりの高層マンションのベランダで、心地よい川風に吹かれながら夜景を見ている光景を想像した。まさかね。そんな良いところのわけないよな。でも中国は家賃安いからなぁ。。

あれこれ話をしながら食事を終え、二人でホテルに帰る。何だか不思議な感じは残るけど、二晩目なので大分なれてきた感じはする。これからはこういうことが日常になってゆくに違いない。

翌朝、例によって朝の飛行機に向けて支度をする。部屋を出よう彼女に言うと、彼女が話があると言い出した。マンションの契約やら引っ越しやらで金がいるというのだ。確かに言われてみればその通りだ。だけど、今になっていきなり言うなよ。金額を聞いたがキャッシュの手持ちはない。ATMで降ろしている時間もない。

「どうしよう」

と彼女が言う。そう思うならもう少し計画的に動けよ。
仕方なく一計を案じた。海外出張用に持っている国際キャッシュカードを彼女に渡しながら言う。

「日本に帰ったら暗証番号をメールするから、必要な金額を引き出したらいいよ」

昔と較べて追い詰められた時の対応力が増した気がする。
感化されたかな。


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3-40. 大型連休
2008 / 03 / 24 ( Mon )
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日本に帰るとインターネットバンキングでお金を移動。
話に聞いていた敷金礼金引越代を口座に置いて、ちょっと考えて、さらに多めの金額を追加で振り込んだ。そして彼女にメールを送る。

“入金したよ。近くのATMでおろしらたいい。暗証番号は****”

数日後、インターネットバンキングで入出金明細を見ると、メールした翌日の午後に引出をしていた。多めに金を入れておいたんだけど、必要な金額だけおろしている。メール以外で彼女の動いている痕跡を見れたことが少し嬉しかった。多めの金額を降ろしたりしなかったことにも好感を持った。

その後9月に入ると、彼女からは毎日メールが入るようになった。自分でPCを持ってない彼女は学校に置いてある共有のPCを使ってメールをしてくる。以前はそれが不自由で数日おきにしかメールしこなかったのに、もう毎日だ。

しかも文章の量も徐々に多くなってくる。慣れてきたとはいえ、英文メールは負担だから仕事が忙しくなるとついつい返信をさぼってしまう。1日でも返信が滞ると、「どうしたの?」「メール届かなかった?」と催促が来る。メールを待ち望んでいた頃が遠い昔のようだ。こんなに変わってしまうものなのか。

メールの内容にも心がこもり、さらに詩的さの度合いが高まる。俺の方も負けじと抽象表現を駆使するが、相変わらず味わいに書ける。なんだかミステリー小説みたいな変な文章になってしまう。でも頑張ってると、それなりに気持ちは伝わるようだった。

9月中旬に引越をした彼女は部屋の大掃除を敢行した。前の住人が相当汚く使っていたらしい。「どうすればこんなに汚くなるのよ」とメールで愚痴をこぼしながら、3回わたる徹底した大掃除の末、ようやく満足のいく水準にまで到達したようだった。

次に会うのは10月の国慶節だ。

この時期は1週間の大型連休になる。彼女も学校が休みになるので俺も遅い夏休みを取り、いつもの出張の後何日か滞在することにした。いつもの様に次に会う日までの日数をカウントダウンしながらメールをやりとりする。いよいよ出張が目前になったある日。俺はメールにこう書いた。

「でも大丈夫かな。いきなり何日も一緒に暮らすなんて。緊張するよ」
「正直言うと私も少し緊張してる。でもきっとうまくいくわよ」

彼女はそう書いて、「でも会うのが待ちきれないわ」とメールを結んだ。



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